
かつて魔王軍と戦い、
『勇者王』として人々に称えられた男――トゥーラ=インクル
しかし15年前、魔族の襲撃で妻を失い、
すべてを捨てて姿を消した。
今では衰えた身体を引きずり、
辺境の村で薬草を売りながら静かに暮らしている。
過去の栄光は色褪せ、かつての憧れも今や嘲笑の的。
愛する娘にも家を出られ、孤独な日々を送っていた。
そんなある日、
謎めいた少年魔導士・エルザーガが彼の前に現れ、
不遜な笑みを浮かべながらこう告げた。
「余命1年。その代わりに、若返らせてやろう」
「勇者として再び立ち上がり、世界を救え」
取引に応じたトゥーラは、再び剣を手に旅立つ。
だがその復活を、人々はどこか恐れ、遠巻きに眺めていた。
かつての勇者の帰還に、何が潜んでいるのか。
戦火の傷跡がいまだ癒えぬ世界で、
浮かび上がる数々の謎――
エルザーガの真の目的。
娘との再会と、その心の距離。
そして、「勇者とは何か」という問い。
これは、傷だらけの勇者と不器用な仲間たちが紡ぐ、再生の旅路。
――終わりから始まる、勇者の物語。